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  • 執筆者の写真元 吉野

磯焼けの食害魚の資源化に向けた漁獲、流通および加工等の取り組み(7/23更新)

【磯焼けの原因の一つになっている温暖化と食害について】

温暖な海域に生息するアイゴは、近年の温暖化による水温の情報で、北上しており、越冬できた集団は、海藻類を一気に食い散らかしてしまうことがわかってきているようです。その後に追い討ちをかけるようにイスズミの食害にあいます。


対馬では、20年前から南の地域で磯焼けが確認され、それから全島に磯焼けが起こっています。ヒジキやカジメなどの海藻類、アワビなどの魚介類の減少は、対馬での暮らしに大きな打撃を与えています。


1)本プロジェクトについて

2018年度から継続実施している対馬での食べる磯焼け対策事業。2022-2023年度は、①食害生物の有効利用に向けた島内流通の仕組みと②食害生物の有効利用に向けた加工事業推進に取り組んでいます。


2020年度には、対馬の各地域の定置網事業者さんが水揚げした未利用魚を、運輸業者さんの定期的な輸送ルートに乗せて丸徳水産さんの加工場付近まで運ぶ仕組みを構築しました。


2021年度から本格的に島内流通を進めています。今は、対馬市からの捕獲や流通、加工への補助金や弊社へのコーディネート委託費をいただきながら、実装していますが、今後、イスズミ・バリの食材としての活用、販路拡大、高付加価値化により、通常の鮮魚と同じように定置網事業者・漁協と加工業者との間での取引が行われるようになれば、自走できる仕組みになると期待しています。


未利用魚であり、磯焼けの原因の一つとされている食害魚の有効活用に向けて、全島の定置網の漁師・漁協・運送業者・加工業者・飲食事業者・学校給食・専門家・行政等が力を合わせて、対馬モデルを生み出しています。


2022年度(令和4年度)は、アイゴ20トン、イスズミ13トンの漁獲がありました。

2021年度に比べると、2022年度(令和3年度)は、大幅に漁獲を増やしました。アイゴの個体数や生態がわからないので、対馬沿岸の磯焼けにどのような影響・効果があるかは分かりませんし、モニタリングが必要と思いますが、今まで捨てられて来た魚を大切に頂くという意味ではとても意義深い取組みです。南方系の魚が対馬で増えて来ていると言われており、気候変動への適応という点からも、素晴らしい取り組みと思います。




全島の定置網に入ったイスズミやアイゴは、定置網事業者さんと漁協職員さんで水揚げし、しっかりと氷で鮮度を維持して、運輸会社(神宮運輸さんと土田物流さん、未来通商さん)に丸徳水産さんの加工場まで運んでもらいます。一次加工を行い、加工品として食品となり、丸徳水産直営の「肴や えん」や学校給食、島内の小売店(スーパーサイキ)、島外の飲食店などで消費されていきます。


日本で三番目に大きな離島対馬で、アイゴ・イスズミを一箇所に集めて、加工することは大きな挑戦でした。しかし本プロジェクトを実施する中で、対馬全島の定置網事業者や漁協、運送会社、加工業者等のステークホルダーのみなさんが、目的意識を共有し、とても協力的に事業を進めてくださっています。


豆酘では、毎年梅雨明けから、アイゴが数十トン単位で、定置網に入ってきます。産卵の時期に集まり、群れで放精放卵を行うようです。


  写真は、豆酘の定置網事業者さんからの提供


2022年度は、この夏のアイゴを大量に捕獲し、資源として活用する流れを作っています。


具体的な仕組みとしては、魚の鮮度を維持するために、水氷をたくさん入れたコンテナ(桶)に魚を入れて、そのまま運送会社に積み込み運びます。一度に運べる量は、コンテナ一箱で500kgのアイゴ。それを丸徳水産さんで4人がかりで捌いていきます。1日に2tを捌くことができる丸徳水産のスタッフのみなさんですが、夏の忙しい中で、本業を行いながら取り組んでいただくため、連日大量のアイゴが運び込まれれば、当然捌ききることができません。


そこで、隣接するダイケーさんの冷凍庫をお借りすることで、一時的に凍結をかけて、保管しておきます。今年は、約10tのアイゴを豆酘から丸徳水産へ。そのうちダイケーへの一時保管は、7t近く。それを丸徳水産さんのペースで捌いて、フィーレにしていきます。




2022年度は、この仕組みのおかげで、対馬地域商社さんも、アイゴの一次加工に参加してくださいました。



2)本事業の軸になる丸徳水産のそう介プロジェクト


丸徳水産さんは、2018年より前から、未利用資源だったイスズミの食材としての利活用を検討していました。全国的も臭い魚の代名詞となるイスズミ。内蔵の臭いは強烈です。

そんなイスズミを、丁寧に血合いを取り除き、何度もフィーレを氷水につけることで臭み成分を取り除く。そのことによって、とても味の濃い、弾力のある食材に生まれ変わります。


そして商品化されたのが、イスズミやアイゴを使った"そう介のメンチカツ”。


2019年のFish1グランプリでのグランプリ受賞は、長崎県においても初。揚げ物では、全国初の快挙となりました。材料がイスズミということで全国の水産関係者に衝撃を与えました。


以降、メンチカツは丸徳水産の肴や えんで定番のメニューとなり、1日5食は注文があるそうです。お土産に買って変えるお客さんも続出。スーパーに冷凍のメンチカツを出しても、すぐに売り切れてしまうほどの人気ぶり。


常温レトルトのお土産(そう介のいりやき、おつまみシリーズ)も商品化され、店頭や空港の売店、対馬観光物産協会のお土産店(ふれあい処つしま)でも販売しています。


対馬全島の学校給食にも丸徳水産はイスズミやアイゴを提供しており、供給が追いつかないほどに。丸徳水産の取り組みは、磯焼け対策にとどまらず、地産地消(地域循環)、未利用資源の有効活用、食育、ESD、パートナーシップの構築など、SDGsの取り組みとして非常に画期的です。


丸徳水産のそう介プロジェクトのウェブサイトはこちらから(最新情報もあります):


2022年度からは、東京銀座のGUCCHI OSTERIA(高級イタリア料理店)でバリの料理がフルコースの前菜として使用され始めています。対馬での通常の高級魚と同様の値段で丸徳水産からフィーレを提供しています。磯焼け対策や対馬の現場のものがたりを、シェフがお食事をお客様にお出しする際にお伝えすることで、大変喜ばれているとのこと。


GUCCHI OSTERIAのヘッドシェフのアントニオ氏が対馬に来島し、磯焼けの現場を見てもらった時の記事が、GUCCHIのオフィシャルサイトで見られます。


2023年度は、福岡の眞貝シェフとトランジットジェネラルオフィスの田尾さんと協力して、新たな展開に進んでいます。「FARMER⇄YOU」というプロジェクトの中で、フィッシュバーガー等アイゴのフィーレを使った商品を、トランジットジェネラルオフィスの運営店舗をはじめ、さまざまな企業の店舗での展開することになりました。フィッシュカツを自店舗メニューとして取り扱い可能な企画協力店舗を随時募集しています。すでに6店舗がアイゴを使ったメニューを提供しています。





温暖化による水温の上昇で、南方系のイスズミ・アイゴは、今後対馬でも増えていく可能性もあります。対馬には高級魚がたくさんいますが、これから海流や水温の変化によって、対馬沿岸で漁獲できる魚の種類や量も変わってくるでしょう。


今まで見向きもされなかったイスズミ・アイゴなどの未利用魚もたくさんいますし、気候変動にどう適応していくかも考えていかねばならない私たちの食生活。そう介プロジェクトや本事業はこれからの対馬の豊かさや持続可能性を考えるきっかけにもなる取り組みです。



広報つしま2023年7月号では、『SWITCH!! 対馬〜みんなの力で、対馬の新しい物語を作り出す〜』という特集を組んでもらいました。対馬市のウェブサイトから記事を見ることができます。


市報の誌面では伝えきれないほどの物語が詰まっているプロジェクト。点が線、そして、面につながったことで新しい道が開かれました。自律的にまわる仕組みになって来ています。


2018年に動き出したプロジェクトですが、当初は、構想を描いて、説明をして回っても、現場の漁師さんや運送業者さんなどからは、できるわけがない・難しいと一掃されたらこともありました。それでも、対馬市のサポートを受けながら、丸徳水産さんと二人三脚で走り出し、手探りの中でも一歩ずつ着実に前に進んでいくと、協力者が増えていき、ついにはたくさんの人が動いてくれるようになりました。


広い対馬の各漁協から魚を即日で一つの拠点に集める仕組みが再構築された今、オール対馬で、水産資源の高付加価値化(ブランディング)の可能性も広がるのではと思います。これからの展開がますます楽しみです。


別途、7月18日18:15-の福岡の放送局RKB「タダイマ」という番組でも、このプロジェクトが取り上げられました。Youtube(海の厄介者が老舗ホテルのカフェに 漁師と水産会社とシェフが世に出した“一流の味”)でも見ることができます。


夢や構想を描き、それに向かってとにかく前に進むことで、仲間が集まり、道は開かれていく。諦めたらそこで試合終了だよ。できない・難しい…ではなく、やってやろう!ワクワクする!という前向きな意識を持って行動してみる。


こういう成功体験を積み上げていくことで、根拠のない自信(強がり)から、確信・信念に変わり、さらに夢が叶っていくのだなと思っています。



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