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  • 執筆者の写真元 吉野

空き家×ペット×移住者の共生を目指す「対馬にゃんむすび∞プロジェクト」

令和5年度空き家対策モデル事業の助成を受けて、「ネコと快適に暮らす家」を売りに、自然と暮らす新たなライフスタイルやネコと住みたい移住者をターゲットにした空き家改修モデルやネコ家具、事業の推進体制を考案し、空き家問題・移住政策・自然共生の課題解決を同時に図る事業を検討しました。


【事業の背景と目的】

長崎県対馬市は、九州と朝鮮半島の間に“飛び石的”に位置する国境の島である。朝鮮半島とは49.5kmと近く、古くから大陸文化の玄関口としての役割を果たしてきました。大陸に近いことから、ツシマヤマネコをはじめ日本本土では見られない希少な野生動植物が数多く存在し、対馬海流の豊かな環境に育まれた水産業が基幹産業です。近年は人口減少・少子高齢化、各産業での担い手不足等の社会的な課題や、森里川海が一体となった対馬暮らしの衰退、海ごみの問題や森林劣化の問題など環境的な課題が顕在化しており、対馬市は「課題先進地」として、SDGs未来都市にも選定され、多様な主体を巻き込みながら、包括的な課題解決を進めようとしています。

国の天然記念物・絶滅危惧種であるツシマヤマネコを生態系の頂点とする対馬を始め、生物多様性が豊かな地域社会(世界遺産登録の地域:沖縄本島やんばる、西表、奄美、北海道知床等)では、飼いネコやノラネコが野外にいることで、希少生物や生態系への悪影響を及ぼし、環境課題となっています。一方で、空き家の増加や人口流出などは、特に離島地域や生物多様性の高い地域で深刻化する社会課題です。これらの環境・社会的な課題を同時に解決する一つのモデルとして、「ネコを家で飼うこと」を売りにした空き家改修・移住政策モデルを考案し、取組みを推進する横断的な事業を企画・検討し、民間主導の多主体の連携・推進体制を整えることで、一石三鳥以上の効果を生み出し、空き家問題・人口減少・動物との共生の課題解決を同時に図るビジネスモデルを生み出します。


【事業の取組詳細】

①空き家調査の実施とモデルハウスの選定、家主との協議

 対馬市上県町佐須奈地区において外観と地域住民へのヒアリング等をもとに調査・特定した空き家49件のうち、外観から状態が良く、家主と連絡が取れ、家主が空き家活用を望み、ペット飼育可の物件(戸建て)4件をモデルハウスとして選定しました。各家主との信頼関係を得るべく、家主とは何度も対面・電話・メールでの対話を繰り返し、今後の活用方法や貸出方法、家賃、改修・管理主体や改修方法などをそれぞれ整理しました。

 A邸は、改修不要であり、部屋数も多く、海辺の立地であり、対馬の魅力の一つである釣りや漁業ができる環境にあることから、利用者ニーズも高いと見込んだことから、ネコ飼育可能なシェアハウスとしての展開を想定して、対馬市の空き家バンクに登録を行い、現在入居者を募集しています。入居者が決まれば、対馬市空き家改修補助制度の活用して、適宜必要な改修を入居者が行い、その分の費用は当面の家賃から相殺する形にすることを家主と合意しています。本事業で開発を行なったネコ家具の導入なども提案したり、空調関係、断熱などの補修などを行うことで、ネコと快適に暮らせるシェアハウスを目指していきます。

 B邸は、専門家による調査から、屋根裏や床下の状態はよく、シロアリ被害もないため、傷んだ床の張り替えや、風呂場・台所の補修を行うことで、利用可能な状態になります。家賃は1万円で、改修費は入居者が負担することを想定しているが、コミュニティ大工加藤氏の指導の元で、DIYによる改修を行うモデルハウスとして、弊社も継続的に関わり、整備を行なっていきます。その際には、ネコが快適に室内で暮らせるように、キャットウォークやネコ走りなどを設置したり、ネコと暮らす家のモデルハウスとして、対馬市民が見学できる家として改修することも検討していきたいと思います。。現在は荷物や仏壇(中身は撤去済)が多くあり、床の状態も悪いため、対馬市の空き家バンクに登録しても、入居者が見込めない状態であるため、申請手続きを進めたが、対馬市の空き家バンク登録は据え置きになっています。

 C邸は対馬材を使った対馬の典型的な家屋であり、状態もとても良いため、すぐにでも移住者に貸し出すことが可能であり、家賃3万円でネコ飼育可能物件として提供します。ただし、登記されていない物件のため、空き家バンクへの登録は不可であり、弊社が入居者を探すこととなりました。

 D邸は、平成2年以前に、飲食店として建設後、スナック/パブ利用を経て、一部を韓国人向けの釣り民宿として経営していた物件であり、居住スペースも3部屋あることから、ゲストハウスやシェアハウスとして、移住者が対馬に試験的に滞在する中長期拠点として整備することを想定しました。ただし、過去の利用状況や増築の後が確認され、当時の図面もないことから、用途変更などを行なっていない可能性があり、簡易宿泊業を取得するにあたっては、建築基準法に基づく適法性や既存不適格の可能性もあったため、建築士による現地踏査が必要と判断し、精緻な調査を実施しました。今後の改修や活用に向けて、補助金申請(有人国境離島法に基づく雇用機会拡充支援事業)の書類作成も進めました。


②移住者の新しいライフスタイルのニーズ調査

 ツシマヤマネコを象徴とする自然が豊かな対馬では、自然の中で働き、暮らす新しいライフスタイルを求めた移住がここ10年で増えてきており、今後さらにそういった移住者をターゲットにして、積極的に受け入れるビジネスモデルを構築したいと思います。対馬ではネコを外飼いする風習があり、室内飼いを広めるために必要なネコ家具等の販売・利用拡大を広めていくことが鍵となります。島内だけではなく島外からの移住者も、ツシマヤマネコの生息するネコの島対馬に移住し、飼いネコと暮らす空き家の活用してもらうことで、島内でのネコの適正飼養の新しいライフスタイルを作っていきたいと考えました。そこで、まずは、島外オンラインのアンケート調査を行い、「ネコと暮らす家」やそのために必要なネコ家具等のニーズ調査(GMO askを利用)を行いました。設問は10つに設定して、回答者数922件で、調査を行いました。

 アンケート結果から、ネコを飼育している人は全体の約15%でした。ネコを飼うにあたって困っていることは、爪研ぎ等のネコの行動により壁や障子が傷つくことやトイレの匂いや汚れが気になることが多くあげられました。これから購入したいネコ家具としては、ネコの爪研ぎ用の家具やネコトイレやペットフードの収納・食事スペースを確保する家具という回答が多かったです。自由回答でも、キャットタワー、爪研ぎ、トイレの部屋の回答が多かった。ネコ家具の購入基準としては、ネコが喜ぶかどうか、手頃な価格帯、サイズ感(家のスペースに合うか)が多かったです。家具職人との商品開発においての参考としました。


③「ネコと快適に暮らす家」のリフォーム・家具等のデザイン設計・メニューの検討

■ネコ家具のデザイン設計・メニューの検討

 地元の木工・家具職人(kiiro)の阿比留氏と、家具を製造する役割を担う対馬もりびと協同組合の森田氏との協議を進め、ネコの室内飼養における快適な空間を作るための対馬材スギのネコ家具(トイレ家具、キャットウォーク、爪研ぎ台)のデザイン設計や商品メニューを検討しました。kiiro阿比留氏・森田氏とは、開発会議を3回行いながら家具のデザインを企画検討し、kiiro阿比留氏のデザインの提案を受けて、その設計図をもとに対馬もりびと協同組合の森田氏がX-Tool及びShopBotを用いて試作品を製作しました。今後、上記のニーズ調査の結果も参考にしながら、検討中のブランドイメージを明確にし、商品化と島内外への販路拡大を進めていきます。


■「ネコと快適に暮らす家」のリフォームの方法(メニュー)の検討

 リフォームにおいては、保護ネコのシェアオフィス・賃貸事業を行うSanchacoや福岡の猫カフェ、松江のネコと暮らすモデルハウス等の先進事例(視察及びヒアリングを実施)を参考にしながら、改修が必要なB邸及びD邸について調査を行いました。コミュニティ大工(加藤氏)及びSINKa(濱砂氏・藤田氏)、フラウ(建築士 工藤氏)を招聘して、改修箇所の特定(床・天井・床下・屋根裏等)や建築基準法や消防法等への適法性の確認、見積算出、リフォームを含む事業計画の検討を行ないました。なお、D邸(表4)についてはさらに、災害リスクの簡易調査及び、地元の不動産やリフォームに詳しい土建業者に依頼をして、D邸の大家と地元大工、水道事業者、塗装業者などによる具体的な改修の方向性とその改修費用の見積も別途作成しました。


④民営の「ネコと暮らす家」をコンセプトにした空き家活用協議会(新会社)の立ち上げの検討

地元事業者(対馬もりびと協同組合やフリーランス職人等)、行政職員(空き家活用・移住担当)、外部専門家(コミュニティ大工加藤氏、SINKa濱砂氏・藤田氏、Sanchaco東氏)を交えて2回のワークショップを行い、空き家活用の事業計画や空き家活用協議会の組織のあり方や役割、体制などを協議しました。2回目は、さらに、移住者お試し滞在拠点としてのシェアハウス構想についても深掘りしました。





【事業の成果】

 本事業は、「ネコと快適に暮らす家」を売りに、自然と暮らす新たなライフスタイルやネコと住みたい移住者をターゲットにした空き家改修モデルを考案し、空き家問題・移住政策・自然共生の課題解決を同時に図るwin-win-winの事業を検討しました。



①空き家調査の実施とモデルハウスの選定、家主との協議

 対馬市上県町佐須奈地域において、4つのモデルハウスを確保し、ネコと暮らす空き家としての利活用を検討しました。B邸及びD邸については今後、改修の必要ですが、モデルハウスとして活用が始まれば、対馬でのネコの室内飼養の事例として注目を集め、今後行政との連携を図り、ネコの室内飼養の流れを生み出していくことが期待できます。そのことで、島外からのネコ好き・自然好きの移住者を受け入れ、対馬における移住促進や地方創生にも貢献できるとともに、世界自然遺産地域などでのモデルの横展開も期待できます。今後は、本事業の成果やモデルルームの活用を発信することで、他の空き家についても家主との協議を進め、空き家の利活用の動きを加速させていきたいと思います。

 

②ネコ家具デザイン設計と試作品作成、空き家のリフォームの見積

 先進事例やアンケート調査の結果を踏まえて、対馬産材を用いたネコ家具の商品開発を進めることができました。キャットウォークや爪研ぎ、トイレ用の家具など、ネコを飼育している家のニーズに合わせた設計にして、ツシマヤマネコが暮らす島での飼いネコの室内飼養を推進するブランド(Catarinyaかたりにゃ)を企画しました。対馬もりびと協同組合による商品の制作と、MITでの販売と販路拡大を進めていきます。島内での地産地消を意識して、島内でのネコの飼育を行う家庭への営業活動なども積極的に行っていきたいと思います。

 モデルハウスについては、B邸・D邸についてリフォームのための調査を実施し、企画・見積を算出し、今後の具体的な改修に必要な予算や改修を行うための課題や流れを確認し、事業計画も検討することができました。

 

③ネコと暮らす空き家活用の事業計画・組織の立ち上げの検討

専門家を交えたワークショップを2回行い、民営の空き家活用の事業計画や組織のあり方を検討することができました。多様な主体が連携する新しい会社(不動産管理)の必要性や役割、必要な人材のイメージなども明確になりました。


【評価と課題】

①空き家調査の実施とモデルハウスの選定、家主との協議

 本事業では、当該地区において、4件のモデルハウスを確保できたことは大きいと思います。今後このモデルハウスの有効活用によって、地域に住む住民や空き家の家主に対して、空き家を貸すことによるメリット(財産の維持・管理、家賃収入、移住者対策、ネコの室内飼養等)を理解してもらい、空き家を貸す文化・流れを加速させていきたいと思います。

対馬の空き家の利活用において1)家主と連絡が取れない、2)家主が貸したがらないことが課題として大きいことがわかりました。特に、家主が貸したがらない理由としては、お盆・正月に帰るから、仏壇があるから、家が汚れている・荷物があるからという理由や、登記の問題(所有者が複数いる、登記していない、土地と家の所有者が異なる)があります。そもそも、家を貸す文化がなく、金額の相場が不明、空き家を使う人がいるかわからない等の懸念も持っています。空き家を活用するための推進体制として、対馬市の空き家バンクがあるが、当該地域には民間の不動産事業者が不在である点も課題です。さらには、空き家バンクについても課題が多く、登録されている空き家物件の状態や改修費用などが不明であり、家主は改修費を出したがらず、借主も移住者を想定し、移住した先の借家を改修する費用の負担が発生するのは負担やリスクが大きいです。さらには、改修・リフォームを行うにあたって、地元大工が少なく、高齢化していたり、移住者が好むような素敵なデザインの家にリフォームするための建築デザイナーがいないなど、対馬を取り巻く空き家事情はさまざまな課題・問題があることが本調査でわかりました。

 今後は、本事業の調査結果を踏まえて、モデルハウス4件の利活用を進めています。A邸及びC邸については、借主の確保に向けて移住候補者への情報提供を行なっていき(異動がある行政機関への情報提供や弊社Webサイトでの発信等)、早急に借主が利用できるようにマッチングを進めていきます。B邸は、コミュニティ大工の加藤氏の指導の元で、DIYによる空き家の改修を進め、ネコと暮らせるモデルハウス1号としての活用を進めます。その際には、家主の改修費の負担や不満を解消すべく、借主が改修をする主体となり、改修費を出し、家賃から相殺する仕組みを実装させていき、成功事例を積み上げていきます。また、D邸については、調査結果を踏まえて改修には大きな予算が必要なことから、改めて家主と協議を行い、活用について再検討する。活用の際は、補助金申請の書類を完成させ、ゲストハウスとしての利用を検討していきます。


②ネコ家具デザイン設計と試作品作成、空き家のリフォームの見積

 対馬は98%が森の島ですが、林業により伐採した木材のほとんどが島外に出荷されていき、地域資源が外に流出しています。対馬もりびと協同組合は、2023年10月に設立され、対馬の森や木材の高付加価値化を目的にまずは対馬材の木工品や家具を作るための設備投資を行っています。本事業で進めているネコと暮らす家の方向性と合致しており、本事業でも連携することができました。今後、対馬材の地産地消による空き家の改修や家具の制作・販売を進めることで、対馬の森林整備や雇用創出にも貢献できる可能性です。また、本市の特徴は、ツシマヤマネコが暮らす島であることが大きく、今般、生物多様性の保全が求められる中で、本事業で推進する飼いネコの室内飼養を推進するブランド(Catarinyaかたりにゃ)は、今後注目を浴びていくと考えています。本事業で開発した家具を皮切りに、多様なニーズにあったネコ家具を生み出したり、空き家のリフォームにおいてキャットウォーク等を設置するような業務も受けていきたいと思います。

 モデルハウスについては、B邸・D邸についてリフォームのための調査を実施したことで、具体的な活用の企画や予算が明らかになりました。外観では優良な物件でも、建築士による調査を行うことで、利活用における課題や留意事項が明らかとなりました。対馬市の空き家バンクに登録されている物件においても、そういった建築士による事前の現地踏査などを行うことで、移住者にとって親切な情報開示が可能です。改修が難しい空き家については、今後も利用が見込まれないため、家主に更地に戻すように呼びかけるとともに、支援を行うことも重要です。

ネコ家具については、対馬もりびと協同組合と連携して、商品化を進め、島内での販売を行ない、地産地消を進めていきます。その際には、上記のブランド(Catarinya)を育てていきながら、ネコ×ペット×空き家のWin-Win-Winの考え方を広め、高付加価値化を目指していきます。

 

③空き家活用の事業計画・組織の立ち上げの検討

 専門家を交えたワークショップを2回行い、民営の空き家活用の事業計画や組織のあり方を検討する中で、当該地域に不動産事業者が進出できない理由として、物件数が少なく、仲介手数料だけではビジネスとして成り立たないという点があります。その背景には、空き家を所有する家主が、空き家を手放さないことや利用できる空き家が限られることがありますが、それ以外にも、空き家の状態の診断ができる人材不足、リノベーションする際の建築デザイナーや大工の不在など、専門的な人材に関する問題があることがわかりました。今後新しい組織を作るにあたっては、既存の不動産事業を想定するのではなく、空き家の確保、診断、リフォーム、貸し出しまでの一連の流れを進めていく組織が必要となります。それは民間のリソースだけでは厳しいため、行政と連携しながら、一部委託業務で空き家バンク登録の業務も担う形で展開していくのが現実的であると考えました。今後、行政との調整や提案を行い、そういった官民連携した組織のあり方や専門的な人材確保・育成も進めていきたいと思います。

本事業を踏まえて、今後さらにブラッシュアップさせて組織化を図っていきたいと思います。

 

事業の成果報告書は以下のPDFの通りです。

【完了実績報告】MIT-圧縮済み
.pdf
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事業に関してご質問等がある場合は、上記連絡先にご連絡ください。

一般社団法人MIT 代表理事 吉野 元

電話0920-84-2366

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