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  • 執筆者の写真元 吉野

地域循環共生圏プラットフォーム構築事業で森づくり構想


「暮らしの豊かさ向上と森林生態系保全」の実装〜ヤマネコと共生する森づくりプラットフォーム事業〜と題して、2020年度から環境省の地域循環共生圏プラットフォーム構築事業に弊社として取り組んでいます。


対馬は、土地の89%が森林であり、ツシマヤマネコをはじめとする希少生物が生息しています。さまざまな自然の恵みを私たちに提供してくれています

しかし、近年は、森林と対馬での暮らしの関係性が希薄化し、林業事業者のみが森林を生業として利用しているのみとなり、有害鳥獣となったかつての天然記念物であるツシマジカの個体数の増加によって、森林の劣化が著しく、希少な動植物の好適な生息地がなくなっています。



また、森林が劣化したことで、生態系サービスが低下し、土砂の流出や倒木などによる災害や磯焼けの原因にもなっており、対馬の暮らしや基幹産業である水産業にも深刻な影響を与えています。


対馬の森の3割は、戦後の拡大造林で一斉に植樹したスギ・ヒノキ等の人工林であり、現在伐期を迎えています。これらの針葉樹は、林業事業者が大型の林業機械を用いて、効率的に伐採・搬出し、対馬の産業としての成長を支えており、今後20年くらいは継続される見込みです。しかし、6-7割を占める広葉樹(天然林)は、しいたけ原木や薪の利用が僅かにあるものの、放置されています。


広葉樹は伐木も針葉樹ほど容易ではなく、尾根や標高の高い場所にあることが多いため搬出も難しいため、林業事業者は、ほとんどが利用されておらず、非経済林です。そのため、誰も手を入れず、鹿の被害もあり、非常に荒廃しているのです。



広葉樹林は、木材以外のさまざまな生態系サービスを有し、希少な生き物たちの生息地として重要であるため、適切な保全活動や持続可能な利用を図ることで、人とヤマネコたちにとって重要な地域資源となります。また、対馬は、7割が個人所有の民有林であり、木材の価格が下がったことにより、森がお金にならないという認識が広がり、所有者は管理を放棄し、次世代への継承も滞っている場合が多く、不在地主の森が増え、荒れた森が多くなっている原因の一つです。


今後、対馬市での新しい森林管理システムが導入され、それらの森が市有林化されたとしても、対馬市の財源で管理できる森は限られており、100年後の対馬の森の行く末が非常に危ぶまれています。


森林は、本質的には「個人所有」のものではなく、公益性の高い貴重な地域資源です。今こそ、対馬の非経済林と言われている森を共有地化して、能力ややる気のある多様な人材が森づくりの担い手となって、森との関係性を再構築し、経済・社会・環境のバランスの取れた森づくりを進めていくことが必要です。


プラットフォーム事業で考えた対馬の森づくりの曼荼羅図



実際に、地域づくりや起業、新しいビジネス、副業、趣味で森を使いたいと考える若者は対馬にも多くいますが、使える森がないために、行動に移す人は、木工品を扱う職人くらいです。そこで、地主と行政、担い手を繋いで、非経済林と言われる「広葉樹の森」の保全と持続可能な利用を推進するための仕組み(プラットフォームや制度)が必要です。


本事業では、人とヤマネコが共生する森づくりを目指して、トラヤマの杜を登録、増設していき、多様な主体(行政・民間・個人)が森林という"場"を共有し、連携しながら森づくりの実践的で横断的なプロジェクトを進めていくための仕組み-協同組合-を設立する事業です。



これまでに何度も関係者との意見交換会を行い、先進地事例も調査し、視察にもいきました。


その結果、対馬において、非経済林として林業分野で放置され、荒れ果てている個人所有の森林を「ツシマモリビト協同組合」が「トラヤマの杜」として認定し、多様な主体が組合員(ツシマモリビト)となって活動を連携しながら展開することで、トラヤマの杜の生態系保全と持続可能な利用による里山・森林生態系サービスの向上を実現し、人とヤマネコが共生するしまづくりを目指すことにしました。


対馬木材産業(株)と弊社で何度も協議を重ね、2022年2月22日付けでツシマモリビト協同組合の前身の組織であるツシマモリビト協議会を立ち上げました。現在、対馬市や長崎県、環境省等の行政や日本ナショナルトラスト協会との対話や協議を進めており、協議会の参画を依頼している状況である。「トラヤマの杜」の定義や、そこでの活動内容などを検討中であり、今後さらにモデル林を管理・運用しながら、具体的な内容を固めていきます。





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